看護学と女性のみらい vol.8
‶女性の体を守る大切な「おりもの」のお話”
今回のコラムでは女性の体を守っている「おりもの」の話をしたいと思います。おりものは女性の健康のバロメーターの一つと言えます。おりものの変化を知ることで、自分の体の不調に気づくことができるので、女性なら知っておきたい知識です。
おりものは成熟した女性には必ず誰にもあるものですが、「おりものが多い」、「においが気になる」、「色がおかしい」など、心配なことがあっても話しづらいものです。下着が汚れるし、においも気になるし、あまり有り難くない気もしますが、実は体を守ってくれているとても大切なものです。
「おりもの」とは、女性の子宮内膜や子宮頸管、腟壁、外陰部の皮脂腺からの分泌液が集まったものです。腟内は、エストロゲンの自浄作用によって酸度がほぼ一定に保たれており、膣内に侵入する病原菌の増殖を防ぎ、細菌感染が起こりにくくなっています。そこには腟内の乳酸桿菌(ラクトバチルス属)などの常在菌叢も関係しています。おりものは膣内を酸性にして清潔に保ち、病原菌が体の中に入るのを防いでくれているのです。
また、おりものは女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の影響によって、月経周期で変化しており、妊娠するためには欠かせないものです。排卵前には透明で卵白のようなトロっとした伸びるおりものが多くなり、精子が子宮内に入りやすいように、おりものの粘液が受精の手助けをしてくれます。そして、排卵後は量が減り、白っぽいおりものになり、月経前になるとまた量が増えて、においが強くなります。さらに、年齢によってもおりものの状態や量は変化します。10代はまだ少ないですが、女性ホルモンのピークになる20~30代前半はおりものの量も増えます。このように、妊娠のしやすさとおりものは関係しています。
おりものは女性の性や生殖の健康にとって必要なものです。成熟期の女性はおりものが増えるものですが、おりものの量が異常に多い、においが気になる、血液が混じる、黄色や緑色など色がおかしい、性器に痛みやかゆみが見られるようなら、病気のサインかもしれません。おりものは非常に個人差が大きいものですので、「いつもと何か違うな?」と思ったら、婦人科へ受診しましょう。
今回で「看護学と女性のみらい」の後半のコラムを終わります。女性の健康は女性ホルモンと密接に関係しています。女性が健康で、自分らしく生き生きと活躍することは、日本社会に活力を与えると思います。女性のみらいが明るい社会は、お互いを尊重し合える素晴らしい社会になると確信しています。
文献
1)綾野幸子,女医さんが教えてくれた女性ホルモンがわかる本,主婦と生活社,2008,p.60.
2)日本女性医学学会編, 女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版, 金原出版株式会社, 2016,p.180.