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2022年06月01日
コラム

女性のこころ vol.3

“中年期とは??”

本コラムのVol.1で、女性のうつ病の原因の1つとして更年期の影響があると書きました。
更年期と言われる時期は、発達心理学で言うと中年期にあたります。中年期という区分は成人期の一部とされていて、おおよそ45歳から60歳ぐらいを指します (Levinson, 1978) 。
では、中年期とは、一体どのような時期なのでしょうか。
以前、中年期は人生でも安定した時期と言われていたのですが、1970年代から「中年期危機」が注目されるようになりました。岡本(2002)は、中年期危機の原因として以下のような変化をあげています。

一つ目が、”身体の変化”です。なかなか疲労回復しない、若い頃は大丈夫だったのに睡眠不足だと次の日が辛いなど体力の衰えを感じる人も多いでしょう。また、中年期は、高血圧や高脂血症・糖尿といった生活習慣病が顕在化しやすい時期で、継続的な薬の服用や治療が必要になる人が出てきます。がんの罹患率も急激に増加します。加えて、性機能が衰え始める時期でもあり、性行為が不可能になったことで大きな喪失感やショックを感じる人もいます。女性の場合は閉経によるエストロゲンの減少で更年期障害があらわれる人がいます。これらの身体の変化に適応できず喪失感を感じたり、病気にかかることのストレスにより、うつ症状を出す人もいます。

二つ目が、”職業における変化”です。昨今は働く女性もたくさんいますが、仕事の上でも変化が表れるのがこの時期です。自分の仕事が認められて昇進する人もいますが、新しい役職への不適応からうつ病を発症する場合があります。実は、昇進は喜ばしい出来事である反面、責任などからストレス度の高いライフイベントでもあります。一方で、これまで一生懸命やってきた仕事で限界を感じる場合もあります。今後は昇進や出世・昇給は難しいと感じるとか、同期に先をこされてしまった、などの挫折感を人によっては感じる時期でもあります。これも大きなストレスとなります。

三つ目が”家族における変化”です。この時期は自身の両親の介護問題なども出てきます。また、子どもが自立したり、親子関係が大きく変化する時期です。さらに、夫婦関係が改めて問われる時期になる場合もあります。

次回のコラムでは、中年期危機の原因となりうる”家族における変化”を詳しく解説したいと思います。

参考文献:無藤隆,子安増生編:発達心理学Ⅱ. 東京大学出版会,東京,2013

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